Case12 今とこれからの暮らしにやさしい庭 府中市

目次

BEFORE

庭の時は流れて今の自分にあうものへ

長年連れ添った庭の植物、花壇、レンガ、枕木などの素材たちは時の流れとともに少しづつ変化していきます。根を張って成長し、そして少しづつ弱ってくるものや庭木の成長により日当たりが悪くなって衰えていった草花、朽ちて来た枕木など気が付くとネガティブなことが増えてきます。庭に向き合える時間や体力、好みの変化など、ライフステージによってお庭に求められるスタイルも変わって当然です。今回は植物のお好きな施主のO様がこれまで愛着のあったお庭を、今とこれからのご自身に合わせていきたいというご相談でした。

今は出来るがこの先はお手入が楽な方向へ

緑が多くあることを好んで来たのに、かえって疲れてしまうことも増えてくる。やはりお手入の負担が先行き不安な気持ちにさせてしまうのも当然ですね。ご自身の手に負えるボリューム、植木屋に任せる部分、今とこれからの変化に対応できる見通しなど、完ぺきではなくても心が落ち着くようなものに出来れば、これからも純粋にお庭を楽しみ続けることができるのかもしれません。新たに今好きなものでお庭を楽しみたいというポジティブな気持ちになって頂くことが今回の目標でした。

PLAN

植栽のボリュームを検討する

お手入を軽減するには管理しやすい植物を導入するのが良いのですが、それ以前に植栽エリアを絞り込んでメンテナンスフリーのスペースを増やすことで、かなりお手入は楽になります。土のスペースは熱や雨水を吸収しますので夏の暑さや豪雨を考えれば固めすぎるのも良くありません。夏の日差しを緩和する落葉樹や、豪雨時の水の流れを考慮した勾配などの工夫もプランの大切な部分です。

中低木をうまく使う

庭木と言えば以前はモミジ、ウメ、マツ、キンモクセイなどが良く使われていました。今はオリーブやレモン、シマトネリコ、ミモザなどが人気ですが、どれも大きく成長する高木です。中低木というとツバキ、サザンカやツツジといった定番以外はあまり知られていません。最近ではお庭もコンパクトになりましたので庭木もコンパクトな樹種が注目され新たな品種も増えてきました。

気持ちが上がるものを選ぶ

植栽エリアのボリュームを検討することで、無理なくお手入に向き合えます。量は少なくても好きなものにフォーカスして楽しむのが良いのかなと感じます。今回はテラスを広めにしてアプローチ周りを緑で楽しむプランです。それほど多くはありませんが、手が届く範囲に集約されていますので見応えもありますし、テラスの空間はスッキリしていますので、メリハリがあって室内からの眺めも圧迫感なく、広く感じる効果があります。

AFTER

これから春を迎える3月

ジャワストーン乱形のテラス、欧州石畳のアプローチ、ココチップのマルチング、そしてこの場所に定植されたばかりの植物たち。すべてが新しい場所で緊張してかしこまっているような初々しい施工直後です。これからはそれぞれが共存しながらこの庭を築いていく、まるで家族のようです。今はそれぞれのテリトリーでお行儀よくしている植物たちが成長し、テラスやアプローチはそれを受け止めていくことで、一つのまとまりある「この庭」という環境がつくられていくのを想像すると、楽しみが一段と広がります。初めは寂しいですが、植栽は植物の成長を考慮して余裕をもって植えます。想像力を働かせますとそれぞれがどのように広がってゆくのか楽しみも期待も広がります。たとえ狭い空間であっても、建物や植木などの配置によって日当たり、風通し、水はけといった環境が変わりますので、どの植物がどの場所に合うかなども少しづつ解ってきます。季節によって流通している草花も異なりますので1年を通して少しづつ増やして行くのも良いでしょう。今は植えたばかりで仮の姿ですが、一年で根づいてきますので来年再来年はこの庭の本来の姿が現れてきます。

目隠しは庭を暗くする

通りに面しているお庭では、目隠しをしたいという感覚が働きます。ただ目隠しの度合いによっては風通しや日照を阻害しますので、庭の中の環境はそれに応じてデメリットもあります。今回はフェンスに絡ませていたツル植物を思い切って撤去することで、明るく開放感のある空間になりました。生垣や目隠しフェンスなどは外部と庭を区切る役割がありますが、今回のように雑木によるソフトな目隠しは区切るというよりも繋ぐというイメージかもしれません。やんわりと境界をぼかすことで、自然な木漏れ日、抜ける風といった変化を庭の中にもたらしてくれます。

重くない常緑樹

葉が落ちないメリットが常緑樹人気なのですが、冬の常緑樹は元気がありません。冬でも緑があるとは言え、あまりいい状態とは言えません。一気に落葉しないので掃除が楽だったり、隣家に気を使わないで済むといった管理面での安心さ(実際は5~6月頃に葉の入れ替わりで落葉している)はあるにしても、見た目はくすんでいます。また常緑樹はよく茂るという特徴があり、濃い緑(深い緑)といった印象もあります。目隠しには良いのですが、やや重くやぼったい印象にもなりやすいのですが、中でもソヨゴ、常緑ヤマボウシなどは比較的抜け感があり、爽やかな印象です。

6月中旬の様子(3か月半経過)

濃い緑に日差しが美しい季節です。奥さんが少しずつ気に入った植物を増やして、通路周りがだいぶにぎやかになってきました。ココチップのマルチングは雑草抑制、泥はね防止、見た目の良さなど効果的です。空間が空いてしまうと植物で埋めたくなるのですが、マルチングしてあることで焦らずゆっくりと増やして行くことが出来ます。

新たなライフステージに

今とこれからを考え、どうするのが良いのか?植物が好きだからこそ悩んだお庭のリフォーム計画でした。今はまだできるけど、近い将来は負担になるという不安があります。アプローチ周りの植栽は砂利などに変えることでボリュームを減らすことも出来ますので、まずベースとしてメンテナンスフリーのエリアが広く取ってあることがポイントです。骨格は変える事無く、今後の気持ちでメンテナンスの容易なアプローチ周りに変えて行くことで、これからも無理の無い範囲で緑を楽しんで頂きたいと思います。

こちらのお庭はもう何年も庭木のお手入に伺っておりました。基本は奥さんがお手入されているのですが、大きな木だけ私の方でお手入させて頂いておりました。結構以前からお庭を変えたいというお気持ちをお話しされていましたし、プランを検討してからもじっくりと、時には時間を空けて気持ちが決まるまで考えるなど、私とのやり取り以外に沢山お考えになったのだと感じました。お客様の思いに対してこちらからご提案するものは色々な可能性の一つに過ぎませんので、他のアプローチが必要な場合も、お客様がじっくりと考える時間も必要なのだと思っています。実際はお客様とプランナーの相性もあると思います。今回は時間がプランを育てるということで、良い経験をさせて頂きました。

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