Case11 ワイルドなローズガーデン 座間市

目次

BEFORE

ツルバラをうまく誘引できない

道路から階段を上がり、門をくぐって玄関へ続くアプローチと、庭にある数多くのバラを整えたいというご依頼がはじまりでした。

自由度の高いツルバラですが、思い描いた景色をつくるためにはある程度の秩序が必要です。その秩序をもたらすものは枝を誘引するための構造物になります。枝を誘引できればどんなものでもよいのですが、まんべんなくバランスよく誘引するためにはそれなりの構造物を構築するのが良いのだと思います。この構造物に対して枝を誘引していくことで、必要な枝のボリュームが見えて来ます。いい枝を必要な場所に持ってきて、余分な枝は躊躇なく落とすことが出来ます。これが秩序です。

一方でざっくりとしたとっかかりに対しておおらかに枝を誘引していくことで、ナチュラルな演出をすることもできます。ちょっとした工夫によって枝をうまく誘引できることがあります。今回はこのざっくりとしたとっかかりでは納まりきれなくなったツルバラたちを、いかに効果的に誘引するかというテーマでプランをご提案しました。

バラの魅せ方、お手入の正解が見えない

お庭にも数多くのバラがあり、構造物の域を超えるものや自然樹形で自立するもの、果樹の枝を利用して誘引するなど広いお庭全体にバラがまんべんなく配置されている状況です。バラ以外にも果樹や低木などがあり、全体に緑のボリューム感が豊かで野性的な趣が感じられたので、これも悪くなかろうと思った次第です。

ワイルドさをポジティブに捉えるならば対極にある管理はあまり整然となり過ぎない方が良いという方向性もありですが、この先どのように管理していくかによって、ご提案も変わるものです。

大きくなったバラをどのように生かすのか

ツルバラは成長するに従って管理が難しくなっていきます。これは単に範囲が拡大していくというだけでなく、枝が数多く分岐してボリュームを増し、収集がつかなくなるためです。大きくなるというと高さや範囲拡大を抑えることに注視しがちですが、大事なのは根元から枝先までをしっかりと1本づつ管理してあげることです。枯枝や分岐した枝の切戻しなどを適切に行うことで、絡まった団子状態から文字通りツルバラとして誘引し直すことができます。(基本の誘引作業は冬の作業です)

そして枝を配置する場所やエリアを限定すること(決めてしまうこと)で管理がしやすくなるのですが、ワイルドさもやや残しておいた方がお庭全体としてはまとまりやすいと感じます。

施主のUご夫妻が共にお庭に愛情を注いでおられるので、出来るところはDIYもやっていきたいという方向性でした。既存の物置をちょっとした作業小屋にリフォームしたり、お庭に手作りの小物を配置するなどとてもクリエイティブであり、思ったら行動するアクティブなご夫妻です。

どんな風に咲かせるか

物置前の空間をもっとバラを楽しめる空間にしたいというご希望と、通路に面したバラをうまく誘引できるようなアイディアをご相談頂きましたので、お庭全体の雰囲気やバランスを念頭におきつつ、プランをご提案する運びとなりました。

今回手をいれるのは一部の空間で、他の部分にも沢山あるバラたちも、少しづつご夫婦で手を入れながら、楽しんで行きたいということで、こちらでもお手入の面でのアドバイスをさせて頂きました。とにかくポジティブ思考なご夫妻なので、楽しくなります。

PLAN

メインの動線は管理しやすくする

道路から玄関までのアプローチでは成長したツルバラを支えられる構造物が必要となります。演出効果の高い位置にあるのですが、通路としては決して広くないスペースになりますので、出来るだけ壁面にしっかりと誘引し、通路を確保したいところです。建物の外壁にビスを打つことは避けたいということで、今回は自立型のウッドフレームをご提案しました。

フレームが自立できるように4本脚のパーゴラ状にし、要所で建物基礎やブロック塀にアンカーで固定すれば安定します。フレーム自体は極力シンプルにして枝の誘引にはワイヤーを使います。その方が白い壁にバラが映えると思ったからです。ウッドフレームはワイヤーを設置する自由度が高いので必要に応じてワイヤーを追加できます。パーゴラ上部に枝を誘引すると立体感が出てより演出効果が高くなります。

これからの庭づくりのベースをつくる

庭の方はブロック塀沿いのバラ、物置前のバラを一体で誘引出来る構造物としてパーゴラをご提案しました。またパーゴラの下でくつろげるスペースとして石張りのテラス、建物からのアプローチ階段、水栓周りも一体でデザイン案を数回にわたってやり取りし、最終的にこちらの案でまとまりました。

ツルバラは沢山咲いてくれるという喜びはもちろんのことですが、どのような開花した景色をつくるかというイメージづくりがさらに多くの楽しみを生み、お手入に励むモチベーションにつながります。構造物はそのイメージを実現するためのベースとなるものです。このようにイメージをすることによってこれからの方向性が見えてきます。

AFTER

玄関側のバラは冬のうちに剪定し、施工したパーゴラへ誘引しました。
春にはイメージ通りの開花が見られました。(まだ満開前ですが沢山咲いています)

庭の方のパーゴラも冬の間に完成し、バラを剪定誘引しました。春を待つ姿もいいものです。

春に石張りテラスを施工しました。ジャワストーン乱形とグレーのピンコロの組み合わせです。水栓は既存の水栓柱を塗装して、蛇口部分をアンティークなものに交換しました。排水のパンも焼き物に交換しましたので、一段と雰囲気が良くなったのではないでしょうか。

玄関からお庭に入るアプローチにも木製の連続アーチを設けました。
小さなアーチから庭に向かって大きなアーチにすることで、バラを誘引した時に立体感で出て重ならないようなデザインにしました。こちらもシンプルなフレームの構造でワイヤーを併用して誘引しています。

満開のバラに包まれて、暖かい日差しの中で紅茶など頂くのはとても豊かなひと時ですね
ご夫婦で共にお庭を楽しめるというのは本当にいいですよね
これからも素敵な瞬間を沢山共感できる場所であって欲しいと願っております。

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